BCPと保険②
そもそも事業継続に関するリスクアセスメントや対策について企業に一番近くでアドバイスできる存在として保険代理店があると思います。
最近やっと保険代理店でもBCPの取り組み始める流れが出てきましたが、BCP自体を理解し、アドバイスまでできている保険代理店は少ないと思います。
これまで中小企業診断士をはじめとする経営アドバイスを行うコンサルタントが主としてBCPの普及を行ってきましたが、企業リスク自体をどのようにとらえているかについて保険代理店とはスタンスの違いがありました。
企業向の保険を主として取り扱っている保険代理店は、企業の存続に必要な幅広い知識と実際の事故対応などの経験が豊富で、この『現場慣れ』していることが事業継続を考える上で非常に大きな意味を持つと思います。
保険代理店の視点からすると、契約企業の事業内容から必要となる保険商品の提案を行うことで実際にその企業のリスク対策を実施していること、事故発生時に財務的なインパクトがどのように発生して、事業への影響がどのように起こるかを身をもって体験していることがその理由です。
もちろん保険だけでは事業の継続に対して不十分であることも知っています。しかしながら、保険代理店としての責務としては適切な保険提案と素早い保険金支払いを行うことでその役目を果たすことになります。
企業としては事故発生前に行うべき対策や教育・訓練、その後の事業再開の手順、段取り、失ったブランドや人的・物的損失などを如何に回復させ、事業を立て直すかが大きな問題であり、事後対応に終始する保険だけでは到底カバーすることができません。
これが『保険管理型リスクマネジメント』の限界であり、これでは実際にリスク対策を行っているとはなかなか言えません。
保険が担う役割自体はいわゆる『リスクの転嫁』であり、『リスクを予防する』役割はありません。本来この『リスク予防』対策を同時に行うことが求められ、更に『リスク予防』の強化により、『リスク転嫁』による保険料負担が減少されていくのがベストな状況であると思われます。
ただし、いかに『リスク予防』を行ったとしても大きな被害が発生するような事案については保険が非常に大きな有効性を発揮します。
例えば巨大地震の場合、どのような対策を講じても人的、物的損失や営業利益などへの損失が発生します。その損害がどのように発生するかなどはある程度予測できるかもしれませんが、発生した巨大な損失をどのようにカバーするかに保険の有効性が大きく働きます。
こういったことが予測される事態に保険代理店がBCPを策定することで経営上の課題を洗い出し、リスクへの対策として財務的なインパクトに対して保険でカバーを行う提案をすることができると思います。
保険代理店がBCPへの取り組みを企業へのリスク対策の提案の一つとして捉え、推進していければ、リスクに強い経営体質を持つ中小企業が増えていくのではと感じてなりません。