BCP策定時についつい見落としてしまう項目、論点について①~重要業務の選定~
一般的に多くの中小企業がBCPモデルプランを使用して事業継続計画を策定しています。
業種業界別でモデルプランがあり、私も静岡県環境衛生事業協同組合のモデルプラン(『事業継続マネジメントとBCP(事業継続計画)がよ~くわかる本』 (出版:秀和システム 著者:打川和男氏) 2016年3月28日発売 第11章) 執筆協力や静岡市から委託された静岡市中小製造事業者向け事業継続計画モデルプラン(コロナ対策用)自体の策定を行いました。
モデルプラン自体を策定するにはBCPの体系を理解していなければならないため、非常に気を使う作業となりました。
今回のブログではBCPモデルプラン策定時についつい見落としてしまう項目、論点について考察しました。1回目は重要業務の選定について考えてみました。
*静岡県BCPモデルプラン『3.01 重要業務を決める』では現状の事業・業務の現状分析、状況を確認するためのもので、ここで業務停止による影響などを検討するツールではありません。しかし敢えてこのツールの使用について枠を広げてみようというのが今回の試みになります。
■事業影響度分析を行うための重要業務の選定について
1.そもそも、どの程度の時間、期間の停止をもとに検討するのか?
静岡県BCPモデルプランの一部を抜粋しました。『3.01重要業務案を決める』では特にどの程度の時間、期間の停止をもとに検討するとは書かれていません。これは策定する事業所側で決めてくださいとの意味で、その時間や期間の設定に自由度を持たせることで検討の幅に制約を持たせるべきではないとのことだと思います。そこで重要業務を選定する際の影響度を測るにはいくつかのパターンを作ってみる必要があります。
静岡県事業継続計画モデルプラン(第3版)
静岡県BCPモデルプラン 7 記入様式
2.業務停止の条件付けは?
静岡県BCPモデルプランでは業務停止の条件は設けていないと思われます。このモデルプランでは
すべての業務が何かしらの理由で停止してしまった場合ととらえるのがよいと思われます。
そこで今回はあえて、条件付けで業務停止になった場合、各項目の影響について検討したいと思い
ます。ここでの検討は後々行うリスク分析の段階でも参考になると思います。
*停電による業務停止
例として食品製造業(1製品しか製造していない企業)の場合
・製造
・総務
・仕入・保管
といった業務があるとします。
停電が発生した場合、製造ラインはストップ、間接業務もPCなどが使えずストップ、さらに原材料の
保管をしている冷凍・冷蔵庫なども稼働しません。
①停電が1日で解消した場合
製造では1日の生産・出荷金額が売上・利益、得意先への影響が考えられます。
総務ではすべての項目であまり影響はないかもしれませんが、例えば給与支払いや取引先への支払い
などの作業日に当たってしまった場合、大いに困ります。
仕入・保管では原材料の品質保持に問題がある、無しに関わってきます。一日でも保存状態が
悪かったことで廃棄処分になる原材料であれば、廃棄費用なども含めて利益への影響が大きくなりま
す。
②停電が7日で解消した場合
製造では7日の生産・出荷金額が売上・利益、得意先への影響に加え社会的影響・批判も考えられる
ようになるかもしれません。
総務ではすべての項目で影響が出始めるかもしれません。月初と月末では停滞した業務量はかなり
違ってくるかもしれません。
仕入・保管では①と同じように原材料の品質保持に問題がある、無しに関わってきます。保存状態が
悪化したことで廃棄処分になる原材料であれば、廃棄費用なども含めて利益への影響が大きくなりま
す。
このように業務別に検討するとどの業務が重要であるかがわかります。
更に判断要因となる項目に『品質への影響』も加えてみるのもよいと思います。
○『業務』の定義として
上記の『業務』の言葉の定義は、いわゆる部署ごとの業務を指していますが、モデルプランの
ガイドラインには『取引先別に検討するやり方もあります』とあります。
取引先によっては製造する製品が全く違うケースがありますので、ここでの『業務』はA社向け
業務、B社向け業務というように分けて検討することになります。
重要業務の選定を行う前に『業務』についての定義をはっきりと決めた方がよいと思います。
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