BCP策定時についつい見落としてしまう項目、論点について⑩～目標復旧時間・レベルの検討～

静岡県BCPモデルプラン【様式4】目標復旧時間・レベルの検討では事業影響度分析の一つである目標復旧時間と目標復旧レベルの検討を行いますが、実際に【様式４】目標復旧時間・レベルの検討をどのように解釈して使用すればよいかを確認しましょう。

静岡県BCPモデルプラン【様式４】目標復旧時間・レベルの検討

このシートを使用して目標復旧時間とレベルを検討するには前提として出典元であるNPO法人事業継続推進機構の「中小企業BCPステップアップ・ガイド」（4.0版）2-5ページを確認する必要があります。

まずは

2.1 得意先との関係からまず検討する

を見ていきましょう。

得意先（取引先や顧客）が貴社の製品･サービスの供給再開を待てなくなる時期になると、代わりの供給者の確保に動き、貴社がその後に供給を再開しても、受注が元に戻らない懸念が増大します。そうなれば、利益や売上げ、資金繰りにも大きな影響が出ます。そこで、それまでには復旧を実現するよう目指します。これが目標復旧時間を決める１つの重要な判断要因となります。

とあります。

これは静岡県BCPモデルプラン　ガイドライン　3.02目標復旧時間・レベルを検討する　作業の手順１が該当すると思われます。事業が停止することでの影響は【様式3】重要業の選定で業務と判断要因によるマトリクスで検討、確認しています。この内容をもとに『許される中断時間』を検討します。

次に

2.2 社会的な影響を考慮する

を見ましょう。

貴社の製品･サービスが災害･事故の応急対応や復旧に必要性が高いものである場合には、その 現場での需要に応えられなくなると社会的な批判が高まるので要注意です。したがって、この時期も目標復旧時間の判断要因となります。

とあります。

これも静岡県BCPモデルプラン　ガイドライン　3.02目標復旧時間・レベルを検討する　の作業の手順２が該当すると思われます。事業が停止することでの影響は【様式3】重要業の選定で業務と判断要因によるマトリクスで検討、確認しています。この内容をもとに『許される中断時間』を検討します。

3つ目の

2.3 目標復旧時間を簡易的に把握する

を確認します。

以上の２つの判断要因から“取引先や社会から許容される中断時間にとどめる”という観点での、できることなら達成したい「許容中断時間」を考えることができます。 ただし、実際にこの「許容中断時間」までに復旧できるかどうかは、現状の対策では難しいと見込まれる場合が多いでしょう。より多くの対策を講じれば何とか達成できるかもしれませんが （後のステップで復旧のボトルネックを検討して必要な対策を把握します）、まずは現実的なところに目標を置くのが妥当です。貴社が目標復旧時間を設定すれば得意先はその実現性を知りたがりますが、対策コストが巨額になるなど達成が難しいならばその目標は信用されません。そこで、最終的にこの｢目標復旧時間｣をどう決めるかは、経営者の判断となります。 なお、災害･事故後においては、実際の被害状況を把握した上で、かねてＢＣＰで考えていた目標復旧時間を踏まえて、実際の達成目標としての復旧時間を経営者として設定します。

とあります。ここでの解釈として2.1では重要業務が停止することで発生する損失（重要業務の選定で分析した結果）と2.2で定量的・定性的に検討した影響（重要業務で分析した結果）を踏まえつつ、【様式１】BCMの基本方針で確認した『利害関係者のニーズと期待の理解』から取引先の要求の範囲内で『許容中断時間』を設定することになります。

しかしながら現実的にその『許容中断時間』を目標復旧時間として設定することは経営上、困難があることも考えられるため、経営判断として時間を設定するとあります。『なお、災害・事故後に…』以降の文章では実際の被害状況を把握してその時点で改めて目標復旧時間を設定することとなっています。

まとめると事業継続計画を立てる際に検討する目標復旧時間・レベルは今後の事前対策や利害関係者が求める『許容中断時間』を踏まえつつ現実的な経営判断で設定し、その目標を達成することを目指すが、実際に災害・事故等が発生した際には事業継続計画で設定した目標復旧時間・レベルを参考にしつつ、被災時の状況を踏まえて改めて目標を設定しなおすことが求められるということでした。

次回はさらに考え方について検討したいと思います。