BCP策定時についつい見落としてしまう項目、論点について⑯~重要業務の継続に必要な要素・資源と再調達困難度~
静岡県BCPモデルプラン【様式5】重要業務の継続に必要な要素・資源と再調達困難度では業務の流れ(フロー 工程)で使用される経営資源について確認を行い、その経営資源が事業継続に与える影響と再調達の難しさについて検証を行います。ここで検証を行う『事業継続への影響度合い』についてどのように解釈して使用すればよいかを考察しましょう。前回は重要な経営資源である『モノ』について触れましたが、今回も『モノ』が与える『重要業務への影響度合い』について考察していきたいと思います。
まず上記【様式5】では重要業務毎に要素・資源のカテゴリーを設けて記載することとなっています。また『必要な人数・数量等』で最低限必要な資源を検討するようにできています。これらを踏まえてこのシートについて考察します。
『モノ』*今回も例として製造業をイメージします
前回は外部依存性の高い『モノ』資源について考察しました。行っている事業、業務・作業よってはインフラなどの外部資源への依存度が大きく変わることを書きました。
今回は社内にある『モノ』資源として機械設備について考察しましょう。量産ラインを構成する生産機械や多くの設備、付属設備などは平時、効率化を求める状況に合わせてその現場にあった、最適化された状態で構成されていきます。更なる生産性の向上のために省人化された工場では多くの機械が忙しく稼働しています。中には精密な動作が求められる機械などもあり、少しのアクシデントでも稼働がストップしてしまいます。
このような機械、設備等が大規模な震災に見舞われた際にすぐに立て直しが行われ、稼働が可能となるものでしょうか?結果、機械設備の復旧作業には専門業者の介入が必要になり、その専門業者の確保も非常に困難な状況になるのも目に見えています。こういった状況で『事業への影響度合い』を検討しなければならないわけですから、正直お手上げ状態になる事業所もあることでしょう。
唯一の対策として事前対策で機械類が損傷を受ける可能性を低下されるような対応を取るしかなさそうです。よく代替方法は?と問われて『代替機械の購入』や『代替生産してくれる企業と協定をする』などの対応策を提案するコンサルタントもおりますが、現実的にそのような対応ができる中小企業は少ないのが現状です。私が製造業の経営者なら『このコンサルタントは現状を分かっていっているのか?』と疑うかもしれません。
機械設備に関しては結果として事前対策によるリスクの低減、被害の軽減を行う対応を行うことが重要になります。災害種類によっては効果的な支援が得られないことを念頭に検討する必要があります。また外部の同業者に生産の一部を依頼することができたとしても顧客の品質要望に応えられる依頼先であるかも確認しなければなりません。大手企業の部品生産などで同業他社でも同じ部品を作っている競合他社があったとしても、そこに代替生産依頼をすることなんてありませんし、競合他社からすれば自社の生産量が増えるだけです。代替生産先として協定を結ぶことができるでしょうか。また相互扶助という非常に素晴らしい考えがあり、BCPにおいても基本となる思想ですが、ことビジネスにおいてどの程度まで相互扶助の精神で取り組むことができるでしょうか。これが日本企業が持つビジネスへの甘さがあり、同時に素晴らしい精神性で仕事に取り組んできた日本企業の良さを感じるところでもあります。相互扶助はあくまでもお互い様ですが、相手を真に助けることができるだけの実力がある企業だけが成しえることとして、まずは自社の事業継続に真剣に取り組んでいくことが大事なことです。
次回は建設業における『モノ』について考察したいと思います。
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