BCP策定時についつい見落としてしまう項目、論点について⑰~重要業務の継続に必要な要素・資源と再調達困難度~
静岡県BCPモデルプラン【様式5】重要業務の継続に必要な要素・資源と再調達困難度では業務の流れ(フロー 工程)で使用される経営資源について確認を行い、その経営資源が事業継続に与える影響と再調達の難しさについて検証を行います。ここで検証を行う『事業継続への影響度合い』についてどのように解釈して使用すればよいかを考察しましょう。前回は重要な経営資源である『モノ』について触れましたが、今回も『モノ』が与える『重要業務への影響度合い』について考察していきたいと思います。
まず上記【様式5】では重要業務毎に要素・資源のカテゴリーを設けて記載することとなっています。また『必要な人数・数量等』で最低限必要な資源を検討するようにできています。これらを踏まえてこのシートについて考察します。
『モノ』*今回は建設業をイメージして考察します。
前回まで製造業をメインとして考察しましたので、業種業界が違うとまた別の見方・考え方があるということを紹介したいと思います。
製造業を営んでいる多くの中小企業では社会全体、インフラや外部依存先の復旧とともにこれまで行ってきた事業や業務の再開を目指すことになりますが、その地域社会やインフラ等の復旧を行う事業をしている建設業などではどうでしょうか。地域社会のインフラを維持している地元の建設業者も等しく被災するわけですが、その状況下でも道路啓開活動などを地元行政と災害協定を結んでいることもあり、行政の要請に応えるため、地域住人のために出動します。道路をふさぐ倒壊した住宅の撤去や大きく穴の開いた道路の埋め戻し作業などにはダンプや建設重機の稼働なくしてはなかなか難しいものがあります。余震なども発生し、命の危険が常に伴う状況になるので人力での作業は極力避けたいところでもあります。
製造業では建物などの施設が被災してしまうと事業、業務や作業を行うことが難しくなります。また、インフラといった外部資源の供給停止や機械設備の故障などによる業務の停止など、多くの要因が事業停止につながります。
建設業の場合は、当然事務所などの被災状況によっては業務の停止につながりかねないこともありますが、建設業務という意味では屋外ということもあり、建物施設が原因で業務が長期間にわたり停止する事態は回避できそうです。ここで『モノ』に関する検討の違いが生まれます。
ただし建設業で使用される各種の建設重機や車両、道具にはもちろん外部資源(電気。燃料)の供給が不可欠であり、工事に合わせた重機や道具の確保が欠かせません。
建設業も製造業と同様、外部資源の供給が絶たれてしまうと事業、業務・作業を行うことは難しくなりますが、2業種の違いを考察すると、製造業の場合は建物施設や生産用機械、設備、インフラや原材料などの条件がそろわなければ業務・作業といった稼働自体ができませんが、建設業の場合、乱暴な言い方になりますが、ある程度人員と重機等がそろえば、小さい規模でも業務・作業が行えるという点が違ってきます。厳密には災害復旧の初期段階で安全確保をしっかりと行うことができ、作業に使用する経営資源がミニマムでもそろった時点で工作班を組織して業務・作業ができるということになります。
ということで建設業における『モノ』が与える『事業継続への影響度合い』をどのような基準で判断するかというと、どのような作業を行うためにはどのような経営資源が必要となり、それがどの程度そろった時点で業務・作業が行えるかという判断になります。これを踏まえて災害復旧や通常請け負っている工事から最低限必要な経営資源がどの程度であればよいのかを判断することになります。
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