BCP策定時についつい見落としてしまう項目、論点について⑲~重要業務の継続に必要な要素・資源と再調達困難度~
静岡県BCPモデルプラン【様式5】重要業務の継続に必要な要素・資源と再調達困難度では業務の流れ(フロー 工程)で使用される経営資源について確認を行い、その経営資源が事業継続に与える影響と再調達の難しさについて検証を行います。ここで検証を行う『事業継続への影響度合い』についてどのように解釈して使用すればよいかを考察しましょう。今回も『カネ』が与える『重要業務への影響度合い』について考察していきたいと思います。
『カネ』
今回も経営資源の『カネ』について考察したいと思います。
前回は『ISO22313:2014 8.2.2事業影響度分析 b)4)財政的実行可能性の低下』の部分から業務毎にかかってくる人件費や原材料、燃料などの経費やこれまでに投入した建物や設備の費用を明らかにすることで、事業を再建するにはどの程度の出費が発生するかを確認していくことで財政的実行可能性(フィジビリティ)について考察しました。
これまでに大きな災害として東日本大震災や新型コロナウイルスの発生により、国からの補助金や金融機関からの低利子融資などの活用で運転資金や設備費などを調達、事業の再建を進めてこられた企業は多いでしょう。ですが、その後災害前の売上まで回復せず、残念ながら廃業に至ってしまった企業も多く存在することも事実です。また災害前と同規模の設備を投入しても、人員不足で元の売上まで回復しないといった話もあります。災害前に借入していた分と新たな借り入れの2重の借り入れの返済も加わり、難しい経営を行っている経営者もいらっしゃることから、事業継続計画を作ってオペレーションリスクは上手く対応できたとしてもファイナンスリスクの方で躓いてしまっては元も子もないということです。このような状況で災害後の市場への影響などでどうなるか予測がつきづらいこともあり、多額の借り入れを行ってまでも事業の再建を目指すには非常に勇気がいることだと思います。今のような燃料費や人件費の高騰、所得の低下などで消費が伸びていかない状態ではこれまでの事業をそのまま進めていくこともためらう気持ちになるのは当たり前になるでしょう。しかし利害関係者の要望や要請から再建し、事業を継続することを選択した経営者の皆さんには頭が下がる思いですが、そのために自分や家族、周りの人たちが不幸になってしまうのも非常に忍びないものです。そう言ったことも踏まえつつこの『カネ』については慎重に検討する必要があります。
そこでこの財政的実行可能性を検討する場合、かなりシビアな基準で判断すべきと思います。特に初期投資が大きく、薄利多売のような事業を行っている製造業やサービス、小売販売業の場合、事業再開後の売上予測を大幅に下げて実行可能性を判断することが重要だと思われます。
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